小説『空(くう)』
夢を見た。
何もない空間に佇んでいる私。サビがかった白の空間。
上から羽根が落ちてきた。それは空気の抵抗を受けることなく、サッと落下していった。
ここは真空だ。なぜ息ができるのだろう。
まるで母の胎内のように安定していて静かだ。
いつからここにいるんだろう。
いつまでここにいるんだろう。
人生を遠くに置いてきて、ここから生まれ変わるのだろうか。
気がついたら死んだのだろうか。
心残りはひとつだけ
ということを考えると、胸の奥から黒いどろどろが沸いてきて
息が速くなって
どうにかして…
はっ、と目が覚めると、旅先のベッドだった。
現実の方が良い、人生から離れるのは気持ちいいし傷つかないけど、
頭がはっきりしている方が、スッキリする。
空(くう)を知ったことで、少し生きやすくなる。
今日も人生を頑張ろう。